惑星のさみだれのネタバレありの感想を書きます。
惑星のさみだれ感想!この漫画は能力バトルじゃなくて日常系漫画!
騎士ィ!!
選ばれた12人のちょっと変な人達がさまざまな思惑交わる中で戦う超能力バトルファンタジー…それが惑星のさみだれ!
まずこの作品がどういう漫画なのかを書こうと思います。
まずいきなり騎士ィってなんだよ舐めてんのか?と思うかも知れませんが、この漫画は『指輪の騎士』の物語です。
12人のガキニキからおっさんまでが、なんかよくわからんけど「領域」という超能力をゲットします。
それを使って魔法使いとかいうおっさんの作り出したちょっとコミカルな化け物である泥人形を木っ端微塵にぶっ壊すというストーリー。
なんせ、それをやらないと「ビスケットハンマー」とかいう新世紀で新兵器なもので地球を破壊されてしまうのです。
これでは甘い明日を祈れないので、なんとかしなきゃあいけないわけやねん。
ただ、この漫画に登場する人たちは基本的に普通の一般人です。
たまに暴走族壊滅させたサイコパスとかホームレスと日常的にチャンバラしてるお姉さんとかいるけど基本的には戦闘力5のおっさんと変わりません。
一般人が鼻ほじってたら、ある日いきなり能力をゲットした漫画。
つまり、これは『日常漫画』ですね。よつばと!が戦闘力をゲットしただけの漫画、日常漫画やね!
ただ、問題は変人だったことである。
軒並みどこかイカれてる。
そして、各々事情やらなんやらがある中泥人形と戦う羽目になるわけです。
その中で成長していくストーリー。
日常の延長でファンタジーをしていくところがまず見どころと言えるでしょう。
雨宮夕日とかいう弱い上に足りない系主人公の成長ストーリー
成長していくストーリーと言っても、やはりいちばん成長するのは主人公でなければならない。
他のキャラが成長しまくっても主人公を食うだけで漫画としてはどうなのってなってしまう。
それが本作の主人公、「雨宮夕日」である。
彼はやる気のないの大学生で、ちょっと厨二入っている。
いきなり、ヒロインである朝比奈さみだれに対して「御意」とか言い出したときはちょっと見るのやめようかと思うくらいこじらせている。
正直初期の彼の痛さはヤバい。
だが、彼にも理由はあった。
彼は幼い頃より祖父に「他人を信じるな」と教わって生きてきたためなんかズレてるのだ。
1巻の頃はやべー主人公の漫画だな…オラはらはらしてきたぞ!って感じです。
しかもこの主人公、実はもらった能力がクソハズレ能力なのです。
弱い彼にできることは思考のみ。
むしろクソつよなヒロインに助けてもらわないといけない雑魚っぷりだった…。
しかし、トラウマを植え付けたじいさんを守る為に単身で戦うあたりから風向きが変わってくる。
クソ雑魚能力で泥人形を撃破したあたりから彼の成長ストーリーが始まり、怒涛のようなラストでは彼はもはや昔のガイナックス並の熱い男になっていた。
途中、最年少の騎士である「茜太陽」くんの視点でみたら、「自分は大人なんだなって」気づいたあたりで完全に成長したところを感じられます。
もう「御意」とかほざいてた彼はいないのだ。
正直1巻の青二才っぷりでおっさんが見ると敬遠されるかもしれないが、成長ストーリーなので、最後まで読むと全然感想が変わってくる漫画かと思います。
惑星のさみだれは終盤盛り上がりがすごい
この漫画がシンプルに一番凄いのは盛り上げどころである。
終盤は本当に怒涛の展開である。
実は名作と言われるものでも「そこそこのカタルシスがある終盤」が書けてるものは少ない。
逆に中盤や序盤が神展開って漫画が多くて、終盤で「あ?」ってなるものは結構ある。
どの漫画とは言わないけど。
この漫画は逆に終盤が本当に盛り上がる。
キャラが出そろった巻あたりからギアが入り始めて、
エピソードが十分積み重なったクライマックスでトップギアになる。
最後が盛り上がると最後まで読んだカタルシスがすごい。
即ち名作として記憶に残ってスカッとするのだ。
個人的にははここが一番この漫画で好きなところですね。
惑星のさみだれは伏線と伏線回収が素晴らしい
この漫画は、まいた伏線を回収するのが上手い。
おそらく作者の手腕なのだと思う。
最初は正直微妙なのだが、物語が積み重ねられることで尻上がりに面白くなっていきのめり込んでいく。
後半では、序盤から散りばめられた伏線が回収されていくのだ。
気づかなかった伏線も2週目で「ここってアレだったのか」と気付かされる。
最後まで読んだ後読み返しても結構楽しめる作品を名作と言うのだ。
というわけで、惑星のさみだれの伏線をいくつか書いてみます。
惑星のさみだれ最大の伏線。アニムスの500年は要ると500年生きた騎士
ラスボスであり敗北したアニムス。
彼は『そこで現世の業は償えるか?』と聞かれた際に、『…難しいな…500年は要る…かも』と答えている。
ここでピンときた読者は結構いる。
実は、すでに死亡した騎士の中に現代まで500年生きたおっさんがいた。
その騎士は500年を通して弟子達から様々なことを学び、500年かけて学んだ。
全知はくだらない、ただの人であると。
最後の弟子二人に、全知を知りたくて神を名乗のった魔法使いに「私達は人間だ」という伝言を残して、戦いを前に死んでいったのだった。
要するにこの騎士「秋谷 稲近」こと、通称師匠に転生したんですね。アニムスは。
『私達は人間だ…人間なのだよ。』という言葉を思い返すと、自分の前世に言い聞かせていたってことが、ラスボスの死に際で判明するわけです。
結果としてアニムスは大事なことを学べためっちゃ深いこの伏線は惑星のさみだれ最大の伏線でしょう。
惑星のさみだれの伏線。東雲半月の死。
東雲半月は圧倒的パゥワーのさみだれを手駒に取り、青二才の主人公を導くザ大人キャラである。
途中、階段で主人公と対峙する予感を話すのですが、これがまんま伏線だった。
割と序盤で死んだので、この話はなんだったんだよと思ってたのですが…まさかの伏線回収されます。
主人公のパワーアップイベント!
半月が死んだことで半月の技術を受け継いだ夕日が半月に勝つ。
これによりオリジナルを超え、クソザコ能力が最強能力「バビロン」へと進化する熱いイベント。
伏線回収と熱いイベントの二重効果で最高なのだ。
そして、実は作中重要キャラのアニマとアニムスは、東雲半月と朝日奈氷雨(さみだれの姉)の子孫であったことが明かされる。
しかし、半月は、アニムスの手により命を落とすことになる。
その結果、さみだれや夕日の生きる歴史においてアニマとアニムスは生まれなくなり、歴史は変わってしまうのだ。
半月と氷雨の子孫であるアニムスが地球を破壊しつつ過去に遡り、そして先祖である半月を殺すことで別の未来が生まれる。だが、この未来を助けた要因のひとつが、敗れたアニムスが転生した、全知でありながら自らを「人間だ」と規定した師匠なのである。
全部読んでみると「はぇー。うまいことできてるなぁ」と関心してしまうのである。
惑星のさみだれの伏線。『ぼくの役割はとうに決まっているのだ。演じ切ってやる』
実は、魔法使い以外に地球を破壊しようとしている人物がもうひとりいる。
それが朝比奈さみだれとかいうヤバいヒロインである。
同じくヤバい主人公はヒロインに忠誠を誓い、魔法使いを倒した後「10人全員ぶっ倒してさみだれに地球を破壊させてやる」とやべーことを言うのです。
その際、3巻であらためて主人公はこう決心する。
『演じきってやる』と。
当初これは自分以外の騎士に対して味方を演じきってやるという決意かと思ってたのですが…。
遂にさみだれが自らの野望を獣の騎士達に宣言した最終決戦。
その野望を止めるために、夕日VS他の獣の騎士達の闘いが想定通り開始される…かに思われた。
魔法使いとのバトルでほぼ満身創痍の騎士を前に主人公が言ったのは…演じきってたのは他の騎士に対してじゃなくてさみだれに対してだったのか…ってなるわけです。
御意 10対1で戦って 1人残らず全員倒します(ウソ)だったのか!
御意がウソで本当によかった。
ここで主人公への評価が「御意」のあたりから180度変わってくるんですよ。
惑星のさみだれの伏線。三日月の願いと三日月VS夕日のラストバトルの結果
実は獣の騎士団は、騎士になる際に願いを一つ叶えてもらえる。
だが、この人たちちょっとおかしいので変な願いばかりなのである。
- 雨宮夕日
祖父の病気を治してもらう。 - 朝日奈さみだれ
夕日と再会したい - 東雲半月
夕日に技の継承したるわ - 東雲三日月
なんかあそこにいる女の子にパンあげたい - 南雲宗一郎
宝くじ当たる - 白道八宵
家族が最期を笑って迎えられますように - 日下部太朗
好きな女の子がもし致命傷を受けたら回避させて - 宙野花子
犯罪者を自殺させたろ! - 風巻豹
泥人形作りたい - 月代雪待
昴ちゃんが幸せでありますように - 星川昴
ユキが幸せでありますように - 茜太陽
アニムスから借りてた能力を変換拒否 - 秋谷稲近
願い事、なし
実は一人を除いて(秋谷稲近は願い事言ってないからスルー)、「運命」に影響を与えてるんですよね。
三日月だけガチで頭おかしい願い事なんですよ。
たまたま目の前にいた女の子に、「願い事~?あー。あのこにパン挙げてw」っておかしいやろ。
ほかはみんな大なり小なり、「運命」が変わってるのに対して、女の子がパン食ったからなんだって話ですからね。
「三日月。子供にパンを与えるために命掛けの報酬の願いを使えるあなたは、心も肉体も運命も誰よりも強い」(引用元:水上悟志『惑星のさみだれ』(少年画報社))
三日月のカラスの従者「ムー」の別れ際の唯一のセリフえで言ってた「運命」は、おそらく「願い事」を指している。
命がけの報酬を子供にパンを与えることに使うってのは、精神的にも強くて、願い事なんかいらないくらい強くて、運命を変える願い事すらいらないくらい本当に強いと。
最後に主人公と三日月がタイマン張った際に、主人公ではなく三日月が勝ったのはこの伏線なんやろなぁ。
「願い事」の力を借りずに自分の力だけで戦い抜く、主人公補正すらも効かない真の「運命の強さ」を持った男が三日月なのだ。
惑星のさみだれで一番好きな名場面、勇者日下部の死
やはり中盤の一番印象に残っているシーンと言えばここである。
主要メンバーは意外と死ななんやね!って思ってたらいきなり普通に死んでしまった。
日下部太郎は宙野花子に惚れており、好きな女の子がもし致命傷を受けたら回避させて!と願い事を使っている。
しかし、花子が実際に死にそうになったら実を呈して花子を助けてしまう。
しかもふたりとも致命傷を食らってしまう。
だが、花子は太郎の願い事で助かり、太郎は絶命してしまったのだ。
ここで太郎がかっこいいのは損得勘定抜きの「無駄死に」だからこそかっこいい。
勝手に体が動いちまったんだよ!ってやつである。
一回復活するからって好きな女の子を見殺しにはできない太郎の勇敢さこそまさに勇者なのである。
そして、これまでバラバラだった騎士団が、太朗の死で初めて全員が同じ気持ちになる。
魔法使いを倒す目的以外は別々の考えを持っっていたのが、全員喪服を来て太郎の弔いに泥人形を倒す。
ここでバラバラだった騎士達が「騎士団」に成長したっていう名シーンですね。
惑星のさみだれは大人になってく過程が詰まった漫画
この漫画はみんな体がでっかいだけの子供である。
そんな登場人物に対して最後の「ぼく達は少し大人になった」がグッとくる漫画。
おっさんは精神を子供にして読んだり、自分の子供に当てはめてよむと面白いかと思います。
サブキャラ全員しっかり心情、描写を描いて、なおかつ10巻でまとまったこの漫画は推したいところですね。
長期連載と違い中だるみもせず一気に読めて終わる作品なので好きな人が多い気がします。
あとアニメ映えは絶対するのでアニメが楽しみです。
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